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横浜地方裁判所 昭和58年(タ)207号 判決

主文

一  原告と被告を離婚する。

二  原、被告間の次男C(昭和四七年四月一三日生)の親権者を原告とする。

三  被告は、原告に対し、金三〇〇万円及びこれに対する昭和五八年一一月四日から支払済みまで年五分の金員を支払え。

四(一)  被告から原告に対し、別紙物件目録記載(一)の土地の五分の一の共有持分及び同目録記載(二)の建物を分与する。

(二)  被告は、原告に対し、財産分与を原因として、右土地持分及び建物所有権の移転登記手続をせよ。

(三)  被告は、原告に対し、右建物を明け渡せ。

五  被告は、原告に対し、次男Cの養育費として、昭和五八年九月二四日から同六七年四月一三日まで毎月末日限り各金五万円を支払え。

六  原告のその余の本訴請求及び被告の反訴請求を棄却する。

七  訴訟費用は、本訴反訴を通じこれを四分し、その三を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(本訴)

一  請求の趣旨

1 主文第一、二項同旨

2 被告は、原告に対し、金七〇〇万円及びこれに対する昭和五八年一一月四日から支払済みまで年五分の金員を支払え。

3 主文第四項同旨

4 被告は、原告に対し、次男Cの養育費として、昭和五八年九月一五日から同六七年四月一三日まで毎月末日限り各金五万円を支払え。

5 訴訟費用は、被告の負担とする。

6 第2ないし5項につき、仮執行宣言

二  請求原因に対する認否

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

(反訴)

三 請求の趣旨

1  被告と原告を離婚する。

2  原、被告間の次男Cの親権者を被告とする。

3  原告は、被告に対し、金七〇〇万円及びこれに対する昭和五九年一月二五日から支払済みまで年五分の金員を支払え。

4  訴訟費用は、原告の負担とする。

5  第3項につき、仮執行宣言

四 請求の趣旨に対する答弁

1  被告の反訴請求を棄却する。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

第二  主張

(本訴)

一  請求原因

1 原告と被告は、昭和三六年六月一九日結婚し、同三七年三月二七日婚姻届を出し、同日長女A、同四〇年三月四日長男B、同四七年四月一三日次男Cをもうけた。

2 (離婚原因)

(一) 原告は、我慢強く、陽気、堅実な性格であるのに対し、被告は、神経質、気短かで、物事に飽き易く、派手好み、かつ見栄っぱりであり、両者は、本来的に性格が合わなかった。

(二) 被告は、浪費癖があり、婚姻した昭和三六年頃は財産がなく借金だけという状態であった。同四一年頃、原告の実家で経営する寿司屋兼中華料理店「○○」に勤めたが、毎夜外出して散財していた。同四二年から同五八年五月頃までは青果市場に勤務したが、その当時も、収入不相応な車を買い、短期間に買い替え、麻雀、ゴルフ、競馬、海外旅行と遊び回っていた。昭和五四年頃までは、被告が家計に入れるのは、月給一七、八万円のうち一二、三万円で、原告は、その不足を補うため、働いたり、実家から借金したりしていたが、被告は、同年頃以後、一切家計費を入れず、同五八年、長男と長女が相ついで入院したときも、入院費すら出さなかった。

被告は、それでも遊興費に不足したらしく、電気工事の仕事をしていた頃には電線の窃盗事件を起し、青果市場では青果物を横流しし、子供の貯金にまで手を出して無断で使用したことがあった。

(三) 被告は、結婚当初から、原告に対して、しばしば暴力をふるったが、昭和四二年頃には、それが激しくなり、こたつ板で原告の頭部を強打したこともあり、以来、原告は、月に数回は頭痛に悩まされるようになった。昭和五四年には、原告は被告の虐待に耐えかねて別居しようとしたが、その際には、被告は、タンスの引出しを原告にほうり投げ、原告は、全治二か月の前胸部挫傷等の傷害を受けた。そのほか、被告は、外で意に添わないことがあったとき、あるいは原告が笑顔を見せないと言っていいがかりをつけたりして、物を投げ、足蹴にするなどの暴行を続け、原告の衣類その他の所有物を燃やすなどした。暴行は、飲酒の際に特に激しく、被告の飲酒癖は、結婚当初からあったが、その後次第に酒量を増し、気に入らぬことがあると多量に飲み、最近では、休日になると朝、昼、晩と飲むようになった。

(四) 被告は、原告との性生活においても常軌を逸し、欲望の赴くままに性交渉を迫り、原告が応じないと暴力をふるい、避妊手段を講じるよう頼んでも一切無視し、そのため、原告は一二、三年間に八回も堕胎したが、被告は、その際も「誰の子か分かったものではない。」と暴言を吐いた。昭和五四年には、原告はバルトリン腺膿瘍を患ったが、その際も、被告は暴力で性関係を強要した。

(五) 被告は、昭和四六年には、青果会社の事務員と継続して関係し、現在も、近所の主婦と外泊等を繰り返している。その一方で、被告は、原告に対し、あらぬ妄想を抱き、全く原因のない浮気の嫌疑をかけて、原告の持物を検査したりした。

(六) 原告は、以上のような被告の性行に耐えかね、何度も別れようと思いつめ、一時別居したこともあったが、子供のこと等の事情で夫婦生活を継続してきた。しかし、被告の行状は二〇年以上変わらず、また、原告と一緒に住みたいとの子供の言葉に与えられ、離婚を決意し、昭和五八年九月二四日、子供ら三名とともに、とりあえず近所に居を移した。

以上、原、被告の婚姻破綻の原因は、被告の浪費癖、暴力、飲酒、異常性格、不貞行為等のほか、両者の性格の不一致にあり、これは民法七七〇条一項五号に該当するから、原告は、被告との離婚を求める。

3 (親権者の指定)

(一) 子供らは、原告を慕い、原告と一緒に暮すことを希望している。

(二) 原告の兄弟は、近隣に住んでいて、原告に対し、物心両面の援助をすることを申し出ている。

(三) 被告を親権者にすることは、被告の経済状態及びこれまでの生活態度からして適当でない。

以上のことから、次男Cの親権者は原告と定めるのが相当である。

4 (財産分与)

(一) 原、被告の共通の資産の主なものは、原告が父親から相続した原告所有土地上に昭和四八年に建築した別紙物件目録記載(二)の建物(被告名義)及び右原告所有土地の隣地で現在右建物の庭として使用している同目録記載(一)の土地(原、被告及び子供三名の共有名義)である。右土地は、原告の父が原告らに贈与したものであるが、共有名義としたのは税金対策上であり、被告の持分はその固有財産ではない。なお、右建物の時価は三〇〇万円以上、右土地のそれは三五〇〇万円以上と考えられる。

そのほかの財産としては、五五万円で建造した墓、被告が青果市場から退職した際の退職金約七〇万円その他で二〇〇万円ほどある。

(二) 原告は、家事、育児の傍ら、家計を支えるべく、内職、会社勤め等をして働いてきた。また、前記の土地は、もともと原告の父の所有物であったこと、前記建物の近所には原告の親兄弟が居住し、子供の学校にも近く、子供らも母子一緒に右建物で居住することを望んでいること等の事情を考えると、離婚に伴う財産分与として、右土地の被告名義の五分の一の共有持分及び右建物を原告に給付するのが相当である。

5 (慰藉料)

原告が二二年間に亘り前記のような虐待を受けたことを勘案し、原告は、被告に対し、金七〇〇万円の慰藉料及びこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和五八年一一月四日から支払済みまで民法所定年五分の遅延損害金の支払を求める。

6 (次男の扶養費)

右財産分与及び慰藉料請求その他諸般の事情を勘案し、次男Cの養育費として、別居後の昭和五八年九月一五日からCが成人に達する同六七年四月一三日まで一か月当たり金五万円の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1の事実は、認める。

2 同2(一)の事実は、否認する。後記三2(一)のとおりである。

3 同2(二)の事実は、否認する。原告の指摘する被告の遊びなるものは、多額の費用をかけたわけでも、それに没頭して仕事や家庭を疎かにしたというものでもない。一般人がレジャーとして適度にたしなむ程度であり、また、仕事上のつき合いから必要な場合もあり、とがめられるべきものではない。

4 同2(三)の事実は、否認する。原告の行状が余りにもひどく、口答えし、罵ったりするので、三、四回は実力を行使したことはあるが、原告のいうようなものではない。衣類などを燃やしたというのは、いくら言っても整頓しないので、明らかに不用となったおしめ、洋服などを燃却処分したに過ぎない。

5 同2(四)の事実は、否認する。堕胎は、二回は被告が申し入れたものであるが、その余は原告の発意による。

6 同2(五)の事実は、否認する。原告の方こそ、数々の不貞行為があり、性的にふしだらであることは、後記の反訴請求原因のおりである。

7 同2(六)の事実は、否認する。

8 同3の主張は、争う。次男は、原告の許から逃げ帰ってきており、その他の事情を考えると、被告が親権者となるのが相当である。

9 同4の主張は、(一)の第一文の事実のみ認め、その余は争う。なお、被告は、原告所有土地に対し、別紙物件目録記載(二)の建物所有のために借地権を有している。また、仮に財産分与がなされるべきものとしても、金銭支払によるのが適当である。

10 同5、6の主張は、争う。

(反訴)

三 請求原因

1  前記一1に同じ。

2  (離婚原因)

(一) 被告は、我慢強く、社交性もあり、竹を割ったような性格で、人に好かれる。他方、原告は、ルーズ、見栄っぱり、派手好きで、気性が荒く、我を通し、自分に非があっても認めない。キャバレー、スナックのホステスとして勤めることが好きで、家庭の主婦におさまっていることができない性格である。

(二) 被告は、昭和四一、二年頃、原告とともに、原告の母、弟が経営する「○○」を手伝ったが、客の一人にこげつき債権を作ってしまったことから、原告と原告の母が口論したこともあり、また、母の考えは、結局のところ「○○」は原告の弟にやるということであったので、はりあいがなくなり、被告も原告も「○○」をやめた。その後数か月した頃、原告は突然、キャバレーのホステスをやりたいと言い出した。被告は反対したが、原告は、きき入れずにキャバレー勤めを始め、一か月もたたないうちに、被告が迎えにいくのを煙たがり、キャバレーの客や従業員と、店がひけた後、遊びに行ったり、朝帰りすることが珍しくなくなり、そのうち、子供らを連れて家出をし、一方的に離婚届を出し、キャバレーのバンドマンと約三か月間同棲した。その後、原告は、自動車事故を起し相手を死亡させ、家に戻った。

(三) その後暫くして、原告は、スナックの手伝いを始め、夜、家を空けるようになり、帰宅が遅く、朝帰りになることが再発した。スナックの常連で○○プルーンのセールスマンをしている男と親密になり、婦人科の方面の病気で入院中、その男が見舞いに来て、原告と夫婦以上の親密な態度であった。

(四) 原告は、退院後一週間もたたない内に家出し、離婚調停を申し立てたが、その後、一応戻ることになった。そして、原告の兄弟の会社に勤めたものの、一年位で争いを起してやめ、再び「○○」に勤めたが、従業員の板前と関係し、その現場を原告の兄弟に発見され、大騒ぎになった。被告は、呆れたが、将来を考え、このときはむしろ原告をかばった。

(五) しかし、数か月後、原告は、再び、被告に勤め先を教えずに、○○市のスナックに勤めるようになった。朝帰りが始まり、二日も帰らないことが度々あった。後になって、スナックの仕事だけで遅くなっていたのでないことが分かった。

(六) その後間もなくして、被告は、ある探偵社からの通報で、原告がクリーニング屋の主人と不倫の関係を続けている、その店に通い、泊ってくるということを知った。昭和五六年七月末のこと、被告は、クリーニング屋が原告を家まで送ってくる現場をとらえた。被告は、許すことができなかったので、その夕方、原告が家に入ることを認めなかった。それ以来、原告は家に帰らない。しかし、同年一一月頃、原告が帰ってきたので、被告は、子供のこともあるし、原告が考え直すなら戻ってもよいと言ったところ、原告は、戻るには戻ったものの、自分の荷物をもってこないし、夜は一一時頃に帰り、祭日の前日や土曜日には外泊するなど目に余る行動を繰り返したうえ、同五八年五月、家庭裁判所に調停を申し立て、不調に終ると、同年九月二五日、完全に家を出た。子供らを連れていったが、次男は、一週間後に逃げ帰ってきた。

(七) 以上のほか、原告は、昭和四三、四四年頃、「○○」の隣りの○○消火器と夜遊びをしたことがあり、同五〇年頃には、原告の親類の○○工務店の職人某が、被告の出張の際、原告と二人で被告方にとじこもり、解雇されたことがある。

以上の次第で、原告には度重なる不貞行為があり、これは同時に、婚姻を継続し難い重大な事由にも該当するので、被告は、原告に対し、反訴として、離婚を請求し、慰藉料金七〇〇万円及びこれに対する本件反訴状が送達された翌日である昭和五九年一月二五日から支払済みまで民法所定年五分の遅延損害金の支払を求める。

四 請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2(一)ないし(七)の事実は否認する。

第三  証拠(省略)

理由

一  公文書であって真正に成立したものと認められる甲第一、二、五号証、原告本人の供述(第一回)により成立を認めうる甲第三号証の一、二、三、証人丙野秋男、同丙野春子の各証言、原告(第一、二、三回)、被告(第一、二回。但し、後記措信しない部分を除く。)各本人の供述に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

1  原告と被告は、中学の同級生であることから、つき合いを始め、約一年間の交際の後、昭和三六年六月一九日結婚し、翌三七年三月二七日長女Aの誕生とともに婚姻の届出をし、同四〇年三月四日長男Bが生れた。

2  被告は、結婚した頃は、車輪工業に勤めていた。昭和四〇年に、体調が思わしくないことなどの理由で退職し、○電気に就職したが、会社の電線の横流しに加担したことが発覚して、三か月位で辞め、その後、○○土建、○○電気にそれぞれ短期間勤め、洋食屋の見習いをしたりした後、昭和四一年に原告の母が経営する寿司屋兼中華料理店「○○」に原告ともども住み込み、同店の手伝いをしたが、客にかけ売りをし、あるいは原告の兄の取引先に生コンの買い手を紹介したところ代金を踏み倒されたりして、原告の親兄弟に損害を与えたことなどから居づらくなり、右「○○」の手伝いをやめた。その後、青果市場に勤めるようになったが、そこでは、競りの値段よりも安く業者に売り、リベートを受け取るという事件を起した。

3  原告は、「○○」をやめた後、借金の返済と生活費を補うため、被告の同意を得て、横浜駅西口のキャバレー「○○」にホステスとして勤めるようになった。しかし、被告が友人四、五人を「○○」に連れてきて飲食して原告のつけにし、原告の給料が三分の二ほども控除されることがあったため、原告が被告に「働く意味がない。」と文句を言ったところ、被告は、原告に対し「男でもできたのではないか。」と言い、殴る、蹴るの暴行を働いた。また、原告が先輩から誘われて店がひけた後、客達と食事に行き、帰りが遅くなり、怒った被告が原告を殴ったこともあった。

4  被告の暴力は、段々ひどくなり、昭和四三年頃には、こたつ板で原告の頭部を殴るなどのことがあったので、原告は離婚を考え、今後再び暴力をふるったときは離婚することを被告に承諾させ、離婚届書を作成した。その一〇日位後に、被告が酔って暴れたので、原告はついに家を出て、別に借りたアパートに移り、同四三年三月二九日、離婚届を提出した。しかし、被告は、その一週間後の同月二五日、原告に無断で婚姻届を出すとともに、家庭裁判所に調停を申し立て、調停の結果、被告は今後、暴力をふるわない、暴行した場合は離婚すると約束し、原告は家に戻った。その間、被告が、原告はキャバレーのバンドマンとアパートで同棲していると言うので、原告の兄弟が調査したことがあったが、そういう事実はなく、被告の邪推であると判明したことがあった。

5  昭和四七年四月一三日に次男Cが誕生、同四八年には、住宅(別紙物件目録記載(二)の建物)を新築し、原告は自宅で電話部品のコーティングの内職をし、原、被告の関係は、一時小康状態を保ったが、昭和五四年になって、原告が友達の経営するスナックに勤めるようになって再び、被告の暴力が再発した。原告は、その頃、子宮口に腫瘍ができ、医師から性交渉を控えるように言われていたが、被告はこれに構わず要求し、原告が断ると殴るということがあったため、原告は家を出た。(なお、結婚生活を通じて、原告は、八回の妊娠中絶をした。)その頃、原告の父が倒れたため、一時、原告が家に戻ったことがあったが、戻るとまた被告が暴行するということが瀕繁にあったため、原告は、夜は別に借りたアパートに泊り、朝、被告が出かけた後に家に戻って家事をするという生活になり、被告は、この頃から原告に生活費を渡さなくなった。

6  昭和五六年になって、被告は、調停を申し立てたが、その後また、被告が原告に暴力をふるったので、調停は不調に終った。昭和五八年三月には、原告が調停を申し立てたが、この頃長男が入院したのにかかわらず、被告は入院費を渡さなかったことがあり、原告は、同年九月二四日、子供三人を連れて家を出、同年一〇月四日、調停は不調になった。

以上の事実が認められ、被告本人の供述(第一、二回)中この認定に反する部分は、採用しない。

二  被告は、原告の不貞行為を主張するけれども、この主張に沿う被告の供述はいずれも曖昧で、右主張を肯認するに足らず、却って、前顕証人丙野秋男、同丙野春子の各証言、原告本人の供述(第一、二、三回)によると、被告主張のような事実はなかったものと認められる。

三  以上認定の事実によると、原、被告間の婚姻生活は既に破綻しているものとみられるところ、その主たる原因は、被告の原告に対する暴行、性交渉の強要、原告の行動に対する邪推、生活費を渡さないことなどにあったというべきである。

従って、原告の本訴離婚請求は理由があり認容すべきであるが、被告は、破綻につき専ら責任があるものであるから、反訴離婚請求は理由がなく棄却することとする。

四  親権者の指定について

前掲各証拠によると、原、被告の次男Cは、昭和五八年九月二四日に原告とともに一旦は家を出たが、その後、被告の許に戻り、現在は被告と生活していることが認められるけれども、他方、右各証拠によると、これは、家が学校に近く、友達やいとこが近くにいるためであること、被告は現在、○○運輸のセールスドライバーをしていて、次男を十分に世話することはできず、日常生活は原告の義姉が、学校の関係は原告が面倒をみていることが認められ、これによると、Cの親権者は原告と定めるのが相当である。

五  養育費の負担について

そうすると、原告がCを監護すべきことになるところ、昭和四七年生れの男子を扶養するには一か月当たり少なくとも金一〇万円を要することは、顕著な事実であるから、被告は、原告に対し、Cの養育費として、別居した昭和五八年九月二四日からCが成人に達する同六七年四月一三日まで一か月金五万円宛を支払うべきである。

六  離婚に伴う財産上の給付について

前掲各証拠並びに公文書であって真正に成立したものと認められる甲第四号証、被告本人の供述(第一回)により成立を認めうる甲第六号証の二及び弁論の全趣旨によると、前記一認定の事実のほか、原、被告が昭和四八年に新築した別紙物件目録記載(二)の建物は被告名義であり、その評価額は約二〇〇万円位であること、別紙物件目録記載(一)の土地は、右建物の庭として使用されているものであるが、もと原告の父丙野太郎の所有であったところ、昭和五〇年に原告、被告、子供ら三名に贈与され、この五名の共有名義となっていること、右土地の評価額は約三五〇〇万円であること、そのほかに原、被告の資産といえるものとしては、被告が昭和五八年五月に青果市場を退職したときの退職金の残りが七〇万円位と五五万円位で購入した墓があることが認められる。被告は、右建物の敷地である原告所有土地に借地権を有していると主張するけれども、被告本人の供述(第二回)中この主張に沿う趣旨の部分は、原告本人の供述(第一、二回)に照らして採用し難く、乙第一号証はその成立を肯認するに足る証拠がないから証拠として採用することができず、ほかに右主張を肯認するに足る証拠はない。

以上の事実及び本件記録に顕われたその他の諸事情を総合勘案すると、被告は、原告に対し、離婚に伴う慰藉料として金三〇〇万円を支払い、財産分与として、別紙物件目録記載(一)の土地の被告名義の持分五分の一と同目録記載(二)の建物を分与すべきものとするのが相当である。

七  以上によると、原告の本訴請求は、離婚請求並びに慰藉料金三〇〇万円及びこれに対する本件訴状が送達された翌日である昭和五九年一一月四日から支払済みまで民法所定年五分の遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の慰藉料請求及び反訴請求をいずれも棄却することとし、親権者の指定及び養育費の負担、財産分与につき人訴法一五条を、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、二四〇条を適用し、事案の性質に鑑み、仮執行宣言は付さないこととして、主文のとおり判決する。

別紙物件目録(省略)

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